風車監督官日報

風車を監督している

ひどい雨が2回あった。

1度目はうどんを食べていたとき。

2度目はバスをおりた直後。

アイスクリームを持っていたので、せっかちに歩いていたきがする。アイスクリームを持っていると、私はせっかちになる。

今を楽しもうという気持ちと、未来に現れる冷凍庫との狭間で、どう振る舞うのが正解かわからなくなる。

映画を2本観た。

カート・コバーンのインタビューと、オタク少年のサクセスストーリーと。

映画は常に過去に撮られる。

 

目の下を隈みたいにするメイクが最近好きだ。銀色のパウダーを下まぶたに塗るとそれ以外のくぼみの暗色が強調されて不健康そうに見える。

こうすることで、つい嫌なことを笑って話してしまったり、馬鹿に振る舞ってしまうこととバランスをとってるのかもしれない。

被害者ヅラ、を自分がしているかもしれないという恐怖に敏感すぎる自覚はある。

「そういうことがくりかえされると、人の顔色をうかがう人間ができあがりそう」と言われて、うかがわないということ、わかんねーーと気づく。人の顔色をうかがわずに殴られ、うかがっても殴られていたなと思い出す。

脳が「今」にいられない。

楽園から

家にいるとき、余暇の時間はよく家の裏の植木置き場に行っている。

枯れた蘇鉄の鉢にヤスデが国をつくっていて、苔がふかふかに生えて、縞蚊がまるまると太っていて、それをハエトリグモがつかまえてがっついて、ダンゴムシの足が異様に速い、コンクリの楽園。

ジョウロで手を濡らしてダンゴムシの前に指をさしだしたら、手から水を飲んでくれた。ダンゴムシはすこし吸い付いてくる。今までずっと知らなかったことだ。くすぐったくて笑う。

ミニトマトがつぼみをつけた。植えるのが遅かったから育ちは順調だ。

ナンテンの花は終わって、新芽が赤く伸びている。そろそろ伐らないと、隣の敷地に入ってしまう。

来週30になる出戻り娘が、小学生時分と同じ遊びをずっとしている。おかしいったらない。鼻歌をどこでも歌う。楽しいことを思い出したら笑顔になる。部屋でたばこを吸う。勝手に何日もどこかに行く。今の方がよけいたちが悪かろう。

こうしていることで回復していく人生がある。ダンゴムシの縄張りを侵した分、あけわたせる自分がいる。世界の美しさがわかる。

 

ファストフードでの夕飯からの帰り道に、自分が自分のふるまい(何人もと同時並行に寝るだとか、これから無職になるだとか、がんばっても焦点が定まらないとか)を情けないと思っているときがまだあることにびっくりした。私は私がこんなに幸せなのを知っているのに。

夏夜の雨に、全ての窓が曇っていた。空気が水とおなじくらい抵抗を持っていた。だから平泳ぎのように歩いて、久しぶりにぐっすりと眠った。楽園は東向きだから実は日もあたるのだ。朝日にあたったから、眠くなれたのだ。

私の体は地球向きなのだ。

 

2026/07/22

「私ってナルシストが好きです。ということが分かりましたです。」

と言った時、話し相手は唐辛子のフリットをつまんで辛いやつにあたり、咳き込みかけているところだったが、「なるほど、厄介な……」と言ってくれた。

私たちの背後の席に座った女が、冷房のききが悪いことを長々と店員に文句を言っていた。これ以上どうにもならないと言われて、露骨に不機嫌になっていた。たしかに自分たちも入店時「エアコン下げていただけますか」とたずねて同じやりとりをしたが、他人がしつこく食い下がってるのを傍から聞くと無粋だなと勝手なことを考える。

メキシコ料理屋だ。大人しく汗をかきながら食べるのでもいいんじゃないか、とあきらめて、私たちは指を香辛料やオリーブオイルやアボカドや玉ねぎやトマトまみれにしながらとりとめもなく近況を話し合った。その中でいきなり現れた気づきだった。

たいてい私が、私が好きだとおもう人々の美意識に沿わないということも含めて。

冷房について文句を言っていた女の連れが遅れて到着した。彼女は自分の戦果が換気扇を回させたことであると、最大限の努力はしたとまた長く説明していた。

ナルシシズムにも色々あるが美意識、魂の、の話になってくるんだろう。それを守るために非合理的な判断をしてしまうような人が、私は好きだ。

どのような世界にいる自分がいいか、という話まで膨らんでくるとそれは真っ当な社会正義にもなっていく。彼らは得てして美意識が高いゆえに自分に自信がないし、私が「ナルシストですね」と言ったら怒るだろう。そういうくちゃくちゃしたところが、たまらなく愛しい。少なくとも、レストランの空調が効かないからと店員や連れに不満を垂れ流すような一気通貫よりは。

 

タコのタコスを食べて〆ということになった。本当にメキシコにもあるのだろうかこれは。

 

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家具を買う

ダイニングテーブルと椅子を買った。

 

ビアテーブルという商品名で、深い緑色の脚がかなり気に入った。全部木製だとフローリングの色味と喧嘩すると思ったので異素材を選んで良かった。リビングダイニングに置くには軽量すぎるかとも思ったけど、今のところしっくりきている。

併せて棚の配置を変えて、朝日が入ってくる窓のところにスペースができたので、植え付け前の苗や花を置けるなと思っている。

 

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やっぱりいい感じだ。

 

去年あたりからヨーロッパ輸入のビンテージ家具とかも見てたけど、重厚な家具を置くとどうしても根が生えたように感じて息苦しいので、これが最適解なのかもしれない。

衝動的な引越しをとりやめたので、私の脳は馬鹿で「引越し費用分が浮いたな」と思って、やっぱり最近DULTON高いな〜とか思ってたけどぱっと買ってしまった。

でもほんとに気に入ったので、ほんとにずっと一緒にいようね、と毎朝、撫でている。

 

死ぬことができなければ、人はけっして生まれ変わることだってできないのに

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自分は世界であるが世界は自分ではないということは両立する。

ル=グウィンはゲド戦記「アースシーの風」で竜と人間の関係性についての詳しい設定(苦し紛れに設定と言う)を明らかにしたが、この設定の効果(苦し紛れに効果と言う)は、ひらたくなら人間・つまり手業つまり技術つまり魔法ニアリーイコール科学、、、中心の視点以外への視座となる。

 

下津が風の話をするときたくさん鳥の声を出してくれて嬉しかった。朝焼けの色に光るのが見えるようで涙が出た。

強い鉤爪でも炎の息でもなく祝祭を呼ぶ咆哮と風に乗る翼をきたえることを選んでくれたことが本当に嬉しい。

 

先日、家を出て他人のアパートに数日間転がり込んでいた。脳がビリビリしていてなんの判断もつかなくなっていたが、今のところどうにか平らな道に踏みとどまっている。このアパートの家主のおかげはとてもある。

私とはちがうファイティングポーズをする人で、私はそこを尊敬している。

世間的にたびたびぎょっとされるタイプの闘い方なのだが、純粋でもある。純粋ゆえ、背水ゆえ、ぎょっとされるという面もあると思うし、それゆえ色んなことに利用されやすいという面ももちろんあると思う。でもこの人は自身の勇敢さでそこを克服してる感じがする。

この人が長年の闘いのときに発した二酸化炭素だって、出会う前からずっと、ひとり部屋でうずくまって泣いていた時にふるえながら吸った空気にまざってたんだよな、というのを今日下津の咆哮を浴びながら思っていた。

 

竜はこの世以外の風にも乗る。世界には色々な姿があって、よく耳を澄ませばそこに行くことはできなくとも一歩迷い込むことはできるみたい。まことの言葉ではなく人の言葉では言い表せないことも多いだろうに下津はずっと私たち一人一人に笑顔で語りかけてくれた。

いま山下公園でそのことの尊さ、得難さについて考えながらこれを書いている。木が揺れている。潮風が吹いている。

choose your life

22時をまわってからラタトゥイユを作り始めた。ナスとズッキーニを切って円形にならべトマトペーストをかけてコンソメとオリーブオイルをふりかけてオーブンにつっこむやつ。その間にスーパーの整形済みハンバーグを焼いて、焼きあがったラタトゥイユを上にのせて明日のお弁当のおかずにした。ほんとうに心が穏やかになる。私の人生は、夜中の台所にある気がする。調理の間ずっと踊ってばかりの国の新譜から「choose your life」を流していた。

 

choose your life

君がこの世界へ生まれ落ちたこと自体が

誰にも触れない

揺るぎない正解みたいだ

 

こんなスケスケの言葉に説得力を持たせる下津の目が体が声が音楽が好きだ。踊れることは人生の最優先事項だ。

 

でも今の私には劇薬すぎて参ってもいる。と言いつつツアーのチケットは2箇所とったけど。

 

夜になると雨が降るのが好きだ。涼しくて嬉しい。正しい世界と思う。

世界の祝福はもう何度もうけてて、それでも終わらせたい日があって、こいつがいるなら、としぶしぶ許している世界。

明日の自分のためにナイスな弁当をつくる。

Googleカレンダーをととのえる。

言いにくいことを少しずつ言っていく。

原稿を書く。

だんごむしと遊ぶ。

書いた原稿を信頼する友人に見せたら「festina lente.(ゆっくり急げ)」とだけ返ってきた。まだ埋められる行間がある。時間も今ならある。

やりたいことを少しとやらなきゃいけないことをそこそこやっていく。

バディー・グラスのタイプライター(20首)

バディー・グラスのタイプライター 20首

関寧花

 

 

イトトンボ異常発生のためテラス席は現在閉鎖中です

友達の親の子育てメソッドが肯定される友達でいる

恋人の自殺未遂1と2に挟まれることになった日曜

 

酒か薬かのちがいだけ   新宿にいくつかはあるゆたかな緑

わざと長い映画を希望した。長い、悲しい、つかれる映画を。

クロサワにタルコフスキーが会いに行く途中で撮った疾い首都高

ガソリンと縄を惰性でとりあげて楽しい時期があったのだっけ

 

この人の猫に私は好かれないとおもう、この人は猫を飼ってないけど

エモ(感情)はテク(技術)って私より詳しいはず……切り傷だらけの腕に、喉に

望まずに与えられたなら棄てろってまだ、まだ、言いきっていたい

町中のすべてが願いの井戸だってあとは思い出すだけでいいのに

両肩にけやきの花殻あびてゆくだれにも戦死しないでほしい

 

グラタンは両手のなかで噴きあがり初めて自分の心配をした

診断を待ってる間に思い出すギャシュリークラムの二十六人

生活安全課(せいあん)のワタナベさんは優秀で私の出身校もメモする

 

ミュリエルは過去にもどり、ひとり乗りエレベーターの発明に尽力した

教会に似た底冷えの部屋にいる。噤むのは記憶がそうさせるから

 

「精神科 入院 荷物」で検索しプラ製の植木鉢なら可とあるページ

ジツゾンの話であると定年後再雇用の親に言えずに

仕方ないって言うのがみんなの役目なら悲しみ切るのが私の役目

ベーコンと卵がレタスより多いサラダを出されてもよろこぶな

夏の夕暮れのたびに泣いてもまた叩けバディー・グラスのタイプライター